新刊書紹介

新刊書紹介

平成特許法改正ハンドブック

編著 尾崎英男・江藤聰明 編
出版元 三省堂 A5判 362p
発行年月日・価格 2004年7月31日発行 3,000円(税別)

本書は、ずばりそのタイトルの通り、平成に入ってからのわが国の特許法の改正内容についてまとめた書である。
今更申し上げるまでもないが、知的財産はかつてないほどクローズアップされるようになった。そして、「日本特許協会」が「日本知的財産協会」と名称を変更したように、「特許部」の名称を「知的財産部」と名称変更した会員企業も少なくないと思う。そして、名称の変更とともに、知的財産部門の役割も変わり、その仕事の領域は大幅に広がったといえる。ゆえに、知財担当者も特許だけをやっていればよいという時代ではなくなり、会員企業においても、人材育成の観点から、特許担当者に特許以外の業務につかせる等行われることも多くなったと思われる。
ところが、ひとたび特許の仕事をはなれて、再び特許業務にもどってみると、その間の度重なる法改正により、 大幅な制度改正が行われており、戸惑いを覚えるという方も少なくはないのではなかろうか。
本書は、そのような特許法改正の変遷について、平易に解説した内容となっており、 そのような場面で非常に役に立つものである。現行特許法であるいわゆる昭和34年法の施行後の長い間は出願公開制度等をはじめとして主に国際的調和、 外国からの要請という趣旨により法改正がなされてきた。
しかし、平成に入ってからは、様々な趣旨から様々な制度が次々に改正されるようになった。例えば、主なものをあげるだけでも次の通りである。要約書の添付(平成2年改正)、補正の適正化等(平成5年改正)、 TRIPS協定成立に伴う発明の実施定義や外国語書面出願制度の導入、存続期間、出願公告制度廃止・特許付与後異議申立制度の導入等(平成6年改正)、特許権侵害訴訟における損害額算定方法に関する規定改定、刑事罰強化(平成10年改正)、公知技術範囲の拡大、新規性喪失の例外拡大、審査請求期間短縮、早期出願公開制度導入、特許権侵害訴訟手続きにおける証拠収集・立証規定の整備、特許料引き下げ等(平成11年改正)、発明定義見直し、明細書からの特許請求の範囲分離、文献公知情報開示制度導入、間接侵害見直し(平成14年改正)、単一性、特許料引き下げ、訂正審判等の期間・内容の整備改正、審決取消訴訟関連(平成15年改正)、職務発明対価規定、秘密保持命令、インカメラ手続における書類の開示、実用新案(平成16年改正)。特にここ3年は重要な改正が続いた。 本当に特許担当者泣かせである。
本書はこれらの各改正趣旨を掲げ、制度ごとに項目を掲げて、時系列で改正の内容を解説している。 非常によく整理され、読みやすく編集されている。
何の制度がいつ、どうして、どのように変わってきたのかが本書により一目瞭然である。 ぜひとも座右においていただき、混乱した頭の整理に役立ててほしい一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 H.N)

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